今大会屈指の好カードは、ブラジルがイングランドに2―1で逆転勝ち、3大会連続の準決勝進出を決めた。
1点をリードされたブラジルは前半ロスタイム、ロナウジーニョがドリブルで逆襲し、最後はリバウドが左足で押し込んで同点。50分にはロナウジーニョがFKを直接決めて勝ち越した。57分、ロナウジーニョが一発退場になったものの、その後も危なげなく試合を運び、イングランドを振り切った。
イングランドは23分、オーウェンが相手DFのトラップミスを突いて先制ゴールを決めたが、後半1人退場したブラジルに対し、決定的なチャンスさえつくれなかった。
W杯での対ブラジル戦の成績は3敗1分けとなった。
リバウド5試合連発
〇…「得点王? まだ関係ないよ」と5戦連発のブラジルのリバウド。前半ロスタイムに、ロナウジーニョのパスをそのまま左足でシュートし同点ゴールを決めた。今大会5試合連続5得点目で、次の準決勝でもゴールを決めると、58年大会のフォンテーヌ(仏)、70年大会のジャイルジーニョ(ブラジル)に並ぶ史上3人目の6試合連続ゴールの快挙となる。しかし、リバウド本人は「まず試合に勝つこと」と強調した。
責任を果たした
ブラジル・フェリペ監督「大変喜んでいる。責任を果たした。監督として、これまでのブラジル代表も尊敬しているが、今回のチームほど勝利への強い気持ちを抱いた選手たちは見たことがない。いろいろなことがあったが、チームを信じてくれたブラジル国民に感謝している」
ブラジル・ルシオ「私からのこぼれ球がイングランドのゴールになってしまい、落ち込んだが、チームが貴重な勝利を収めてほっとしている」
ブラジル・カフー「優勝したわけではない。まだ2試合ある。謙虚な気持ちで、これからの試合に臨みたい。ブラジル代表を安心して見てもらえると思う。ベスト4まできた。優勝したい」
ブラジル・ジュニーニョパウリスタ「ロナウジーニョは、故意にけがをさせるような選手ではない。審判は彼がどんな人格か知らないから誤審したのだ」
いい経験積んだ
イングランド・エリクソン監督「11人対10人の戦いで、もう少しうまくできたと思う。残念だったが、若い選手はいい経験を積んだ」
ファンに謝罪したい
イングランド・シーマン「(涙ぐみながら)重要なことは、ファンに謝罪したいということだ」
イングランド・ベッカム「ブラジルは技術的に素晴らしかった。こういう結果になったのは悲しい。でも僕は、主将として23人全員が一丸となって戦ったことを誇りに思う」
イングランド・キャンベル「(同点シュートを決められた)リバウドは世界最高の選手の一人。スペースを見つけてから、決定力がある。どうにもならなかった」
イングランド・ファーディナンド「がっかりだ。1人少ない相手にさえ勝てなかった。(リードしてから)ブラジルは時間の使い方がうまかった」
ロナウジーニョ 同点アシスト、決勝FK
逆転劇のヒーローから、戦犯になりかけた。華麗なドリブル、鮮やかなFK、そしてレッドカード。準々決勝屈指の好カードは、22歳の新鋭ロナウジーニョの“独り舞台”だった。
前半のロスタイム。センターライン付近でボールを受けたロナウジーニョはフェイントをかけながらスピードを上げた。華麗なドリブルはDF陣を引きつけて、右に流れたリバウドがフリー。その瞬間、右足の外側でパス、リバウドの左足シュートが決まった。堅守を誇ったイングランドの組織力が、個人技に粉砕された。
後半の開始5分、右サイドのFK。ロナウジーニョは、GKシーマンが前に足を踏み出したのを見逃さなかった。だれもがゴール前にボールを入れると思った。しかし、ロナウジーニョの右足から放たれたFKはGKの頭上を越え、そのままゴールに吸い込まれた。鋭い得点感覚と集中力に、相手守備陣はぼう然とした。
その7分後に退場処分を受けた。ミルズの足首に危険なタックルを仕掛けたと、主審に判断された。このレッドカードはブラジルの攻撃に水を差し、イングランドの反撃に火をつけた。
10人のブラジルは4分間のロスタイムを含め37分間、耐え続けた。ロナウジーニョは「反則ではないと思うが、仕方がない。自分のミスでチームが苦しくなったことがつらかった」と振り返った。
ロナウジーニョという名前の意味は「小さなロナウド」。デビューから、その名にふさわしい活躍を続けている。97年U―17世界選手権で優勝し、得点王に。99年南米選手権で脚光を浴び、その後、ロナウド、リバウドとともに「3R」と呼ばれた。
次の準決勝、その攻撃陣の顔の1人が出場できない。しかし、「ブラジルには歴史があり、その強い精神力は失われていない」とフェリペ監督。王国に焦りはない。(伊藤 高昭) |
オーウェン先制弾実らず
プロの目 ラザロニ:「3R」中心に納得の出来
プロの目 ペリマン:ベッカム期待外れ
ピッチサイド:ボールキープ力の差 歴然
ピッチサイド:伝統国のスタイル 不変